葉酸と小児喘息の関係の研究論文から考察
葉酸サプリを妊娠後期も飲み続けた場合、『3歳~5歳にかけて小児喘息リスクが上昇する』という話も聞いたことがある妊婦さんもいるのではないでしょうか?その情報の元となっているのがオーストラリアの研究機関による論文で、結論から言いますと、妊娠後期に合成の葉酸サプリメントを1日に高用量(1000μg以上)摂取し続けた結果が、小児喘息リスクが上昇したという結果内容です。
その一方で、食事から摂取する食事性葉酸には、小児喘息リスクの上昇の確認はできなかった。としていることから、葉酸は食事から摂取すべきという内容です。この研究結果もあり、葉酸サプリは妊婦にとって大切な栄養素ですが、摂取量を400超えないこと、合成ではなく食事性である天然由来の葉酸サプリメントが良いという判断ができます。
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以下、葉酸と小児喘息の情報元である研究機関の論文を、日本語に翻訳をしてみました。読みにくい部分もあるかと思いますが、参考にして頂けたらと思います。
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以下より論文を日本語に翻訳したものです。
原著論文
小児喘息に対する妊娠中の補給葉酸の影響:予測出生コホート研究
翻訳元URL:http://aje.oxfordjournals.org/content/early/2009/10/30/aje.kwp315.full.pdf+html
本研究は、1998~2005年におけるオーストラリアの予測出生コホート研究のデータを用いて、小児喘息に対する妊娠中の葉酸塩(folate)のタイミング、用量及び供給源の影響を調査することを目的として行われたものです。3.5歳及び5.5歳において、それぞれ、490人及び423人の母親及び、子どもが研究に参加した。
食事及びサプリメントからの母体の葉酸塩摂取を、食事摂取頻度調査票によって、妊娠初期(16週未満)及び妊娠後期(30~34週)において評価した。主な評価は、母親記入の調査票によって得られた、内科医に診断された喘息であった。3.5歳の子どもで11.6%、そして、5.5歳の子どもは11.8%で喘息が報告された。
妊娠後期におけるサプリメント形態で摂取した葉酸は、3.5歳における小児喘息のリスク増加と関連しており、及び持続性喘息。影響の大きさは、潜在的な交絡因子の調整によって変化しなかった。関連性は、5.5歳で類似していたが、単変量モデルでは、統計的有意性に達しなかった。小児喘息に関するこれらの知見は、妊娠中の葉酸塩の補給が、後成的メカニズムによってマウスのアレルギー性喘息表現型をもたらし、幼い子どもにおける弱い呼吸器系の影響と関連しているという先の観察を裏付ける。
喘息;子ども、幼稚園;葉酸;メチル化;妊娠
略語:CI、信頼区間;IgE、免疫グロブリンE;RR、相対危険度。
米国、英国及びオーストラリアの現行の公衆衛生ガイドラインは、子どもの神経管欠損のリスクを減らすために、女性が、妊娠の前の月及び妊娠第一期に1日当たり400 μgの補給量の葉酸を消費することを推奨している。しかしながら、神経管欠損に対する予防効果により、明らかに有益なものとしての葉酸塩補給状況は、マウス及び幼児において近年の研究によって試みられ、幼少時における呼吸器系の健康に対する妊娠中のサプリメントによる葉酸摂取の有害作用が実証されている。
葉酸サプリメントが、メチル化感受性DNA結合タンパク質の状態を変化させることによって、後成的変化を誘発し得るメチル供与体の有力な供給源であることが認識されている。このモデルは、近年、マウスに用いられ、胎児発育時にヘルパーT2型(Th2)サイトカインの発現に影響を及ぼし、そして、炎症反応及び子どものアレルギー性気道疾患のリスクを変化させる、葉酸塩誘発型DNA変化の影響が実証されている。
ノルウェーの32,077人の子どもにおける喘息症状に関する大規模研究によって、ヒト研究へのこれらの知見の応用が開始され、妊娠中の葉酸補給の履歴が、喘鳴及び下気道感染症と関連があることが実証されている。
Håbergらは、妊娠後期ではなく妊娠初期において、6~18か月の二分した葉酸補給(ある/ない)における喘鳴のわずかに有意な増加を観察した。この研究の限界は、最大18か月の喘鳴が一時的である可能性があり、最大5年続く喘鳴/喘息ほど長期肺機能に有害ではないことである。
筆者らの知る限りでは、先の研究は、小児喘息に対する妊娠中の母体の葉酸(合成サプリメント形態)及び、葉酸塩(自然な食事形態)のタイミング、用量及び供給源の同時効果について報告していない。本研究の目的は、妊娠中に摂取する葉酸及び葉酸塩の用量及びタイミングと、3.5歳及び5.5歳における喘息状況との関連性についての予測妊娠コホート研究からのデータを検討することである。
材料及び方法
サンプル及び研究計画
第1世代コホート研究は、サウスオーストラリア州アデレードの4箇所のマタニティクリニックから1998~2000年(オーストラリアの食品葉酸強化以前)において妊娠初期16週で採用した女性とその子どもに関する予測長期研究である。
具体的には、本研究は、出生及び出生後発育への成長に対する妊娠中の母親の食事の役割について評価するように計画された。採用された605人の女性のうち、557人(92%)は、本研究の妊娠段階を終了し、生存する単生児がいた。参加女性は、一連の社会指標(すなわち、年齢、学業成績、雇用状況、世帯所得、親族関係の状況及び家族規模)において、1998~2000年のサウスオーストラリア州の子どもがいる全女性に類似していた。
調査看護師は、妊娠初期(16週未満)及び妊娠後期(30~34週)において、構造化食事摂取頻度調査票及び、使用サプリメント一覧を用い、食事を含む個人的状況及び健康に関して、母親から話を聞いた。母親と子どもに、2歳及び3.5歳において、子どもの幼児期(6、9、12か月)の構造化プロトコルを用い、そして、5.5歳において、母親記入の郵送調査票によって、フォローアップインタビューをした。
調査票では、子どもと母親の健康、家族状況及び保健行動に関する詳細情報を求めた。本研究は、ヘルシンキ宣言において表明された指針に従って行った。アデレード大学ヒト研究倫理委員会(The University of Adelaide Human Research Ethics Committee)から倫理承認を得た。
評価基準
母親に、3.5歳の子どもの喘息状況に関する2つの質問(「あなたの子どもは喘息と診察されたか。」及び「誰が診断をしたか。」)をし、5.5歳の子どもの喘息状況に関する2つの質問(「医者から、子どもが喘息であるとこれまで知らされたことがあるか。」及び「子どもは現在喘息であるか。」)をした。
5.5歳において内科医から喘息と診断されていた場合、それぞれの年齢において喘息であると認められ、そして、子どもは現在も喘息であった。子どもが3.5歳と5.5歳でともに喘息であった場合、持続性喘息であると認められた。
アトピーのための皮膚プリックテスト又は血液検査をしない状態で、喘息は、3.5歳のみにおいて(5.5歳ではアトピーに関する質問をしなかった。)1人以上の内科医によるアレルギーという診断(湿疹を含む皮膚、食品、薬剤又は花粉症)を伴う場合、アトピー性と定義した。
暴露変数
食事葉酸塩。母親の食事摂取頻度調査を、妊娠初期及び後期において、訓練を受けた調査看護師によって実行した。インタビューアは、197品の食品一覧によって進行し、女性がそれぞれの食品を食べたか否か、もしこれを食べた場合に、どのくらいの頻度及び数であるかについて聞いた。
一人前の分量の評価を支援するのに、食品モデル及び写真を用いた。この器具の開発及び検証の詳細については、他の文献に公表されている(9)。葉酸塩の一日食事摂取量は、一般的食品栄養素含量のデータベース(NUTTAB91-92)(10)を用いて、食事摂取頻度データから算出した。
葉酸補給。母親は、妊娠(ある/ない)の前に、葉酸サプリメントの遡及的な消費を報告した。母親は、妊娠初期及び後期のインタビューにおいて、いずれかのサプリメントの詳細な同時使用(銘柄、用量、頻度)を報告した。報告された妊娠初期及び後期のサプリメント摂取量(銘柄、用量、頻度)を、パッケージ上に示された用量情報を用いて、妊娠初期及び後期の葉酸の一日摂取(μg/日)に変換した。母親が妊娠サプリメントの特定の銘柄を報告しなかった場合、3つの入手可能な銘柄商標からの平均葉酸を割り当てた。
交絡因子測定
母体葉酸塩摂取又は小児喘息と関連性についての証拠がある場合、潜在的な交絡因子が含まれていた。これは、多くの場合、交絡因子、葉酸塩、喘息及び社会経済的状況間の共有される関連性によるものであった。潜在的な交絡因子に関する情報は、妊娠調査票、出生前記録及び12か月のインタビューから得られた。
考慮された潜在的な交絡因子は、母親の教育、母親の喫煙、母体のビタミンE、ビタミンA、ビタミンD及び亜鉛の摂取(上述した食事及びサプリメント葉酸塩のための方法ごとの評価、ビタミンDのみサプリメント)、妊娠期間、経産回数、妊娠回数、授乳期間、並びに、母親の喘息(母親は、妊娠中に、及びすべての後のインタビューにおいて、現在の喘息及び薬物治療に関する情報を提供した。さらに、過去の喘息経験は、12か月で明示的に得られた。)であった。
統計解析
サンプルに含まれる子ども及び3.5歳又は5.5歳で情報を提供しなかった人における暴露の差を検討する初期解析を、t検定(正規分布連続変数)、Wilcoxon順位和検定(非正規連続変数)、及びカイ二乗又はFisher直接確率法(カテゴリデータ)を用いて評価した。
4つの時点(妊娠前、妊娠初期、妊娠後期、及び妊娠初期+妊娠後期)のそれぞれの母体葉酸及び葉酸塩摂取(連続変数として評価)と、それぞれの喘息評価(3.5歳、5.5歳、持続性)との関連性を、Poisson回帰モデルを用いて調査した。
娠初期及び後期において、葉酸及び葉酸塩は、異なるバイオアベイラビリティーにより、最初に、個別の連続変数としてモデルに含まれていた(11)。そして、モデルを、葉酸と葉酸塩の和(連続変数)によって再実行した。
モデルを次のように構築した。進法の暴露変数としての妊娠前葉酸、妊娠初期の葉酸及び葉酸塩、)妊娠後期の葉酸及び葉酸塩、並びに、妊娠初期及び後期の葉酸及び葉酸塩。
そして、それぞれのモデルを、交絡因子を調整して次のように反復させた。すべてのモデル(母親の年齢、母親の教育、母親の喘息状況、経産回数、妊娠回数、妊娠期間及び授乳期間)、モデル1及び2(妊娠初期の母親の喫煙、並びに、ビタミンA、D及びE(全μg/日)と亜鉛(mg/日)の摂取)、モデル3(妊娠後期の母親の喫煙、並びに、ビタミンA、D及びE(全μg/日)と亜鉛(mg/日)の摂取)、並びに、モデル4(モデル2及び3において挙げられている交絡因子)。
次いで、それぞれのモデルを、評価変数として3.5歳におけるアトピー性喘息状況(喘息なし、非アトピー性喘息、アトピー性喘息)により、多項ロジスティック回帰として反復させた。
葉酸塩、母親の喫煙、母親の喘息、経産回数及び子どもの性別との間の潜在的な相互作用を、あらかじめ特定し、それぞれのモデルで試験した。結果は、P<0.05において有意であることを示す。感度解析には、小さな5.5歳サンプルサイズを用いた3.5歳モデルにおける喘息再発が含まれていた(すなわち、5.5歳においてインタビューを終了しなかった子ども及び女性以外)。
また、解析を、12か月インタビュー(n=42)においてみられなかった母親の喘息がすべて陽性で、その後、陰性であると仮定して、再実行した。後者の解析が葉酸塩と小児喘息との関連性を変化させなかったので、完全な症例解析をここで示す。解析をすべて、SAS統計ソフトウェア(SAS Institute社、ケアリー、ノースカロライナ州)により実行した。
結果
3.5歳の490人(範囲、3.4~3.8歳)、及び5.5歳の423人(範囲、5.4~6.3歳)の母親、並びに、子ども(それぞれ、元のサンプルの88%及び76%)が、本研究に参加し、母体の葉酸塩摂取、及び交絡因子変数のデータ欠損はなかった。
表1. 第1世代コホート研究における3.5歳及び5.5歳のサンプルに含まれる子どもの母体特性(アデレード、オーストラリア、1998~2005年)
略語:SD、標準偏差。
a特性は、参加者と、3.5歳又は5.5歳のデータ欠損のあるものとの間で有意に異なる(P<0.05)。
表1は、妊娠段階の終了時の包含基準を満たした子どもの母体特性、並びに3.5歳及び5.5歳の時の包含基準を満たした子どもの母体特性を示している。3.5歳において参加していない子どもの母親は、本研究の妊娠段階を終了した人よりも、若く、3か月以上授乳している可能性は低かった(P<0.05)。
5.5歳において参加していない子どもの母親は、本研究の妊娠段階を終了した人よりも、若く、妊娠前用葉酸サプリメントを摂取している可能性が低く、教育されておらず、妊娠初期及び後期に多く喫煙し、喘息履歴を報告する可能性が高かった(P<0.05)。ビタミンA、D及びEと亜鉛の用量は、妊娠初期におけるビタミンA(5.5歳サンプルにおいて1,145(標準偏差、570)μg/日に対して、妊娠段階サンプルにおいて1,180(標準偏差、627)μg/日)を除いて、参加状況によって有意に異ならなかった(データに示さない。)。
3.5歳の子どもの11.6%、そして、5.5歳の子どもの11.8%で喘息が報告された。30人の子ども(7%)が(3.5歳と5.5歳の両方において)持続性喘息であることが報告された。母親による葉酸の使用は、妊娠全体を通して異なり(表2)、4分の1の母親が、いずれの妊娠段階においてもサプリメントを摂取していなかった。
また、サプリメントの種類及び用量も異なっていた。妊娠初期では、母親は、妊娠後期よりも独立型サプリメント(standalone supplement)として葉酸を摂取する可能性が高かった(31%対9%)。独立型サプリメントには、総合ビタミン剤よりも高い用量の葉酸が含有しており、すなわち、妊娠初期では、総合ビタミン剤中の500 μg/日と比較して、独立型サプリメントからの葉酸の中央摂取値は2,948 μg/日であった。これによって、表1でみられる葉酸の高い妊娠初期一日摂取量がもたらされている可能性がある。
表3. 第1世代コホート研究における妊娠中の母体葉酸塩摂取と3.5歳又は5.5歳の子どもの喘息との関連性(アデレード、オーストラリア、1998~2005年)
* P<0.05。
aすべてのモデルを、「a」(母親の教育、母親の年齢、経産回数、妊娠回数、妊娠期間、母親の喘息状況及び授乳(3か月未満の部分的又はすべて))について調整した。妊娠前及び妊娠初期モデルを、「a」、並びに、妊娠初期における食事及びサプリメントのビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、亜鉛、及び、妊娠初期における母親の喫煙について調整した。妊娠後期モデルを、「a」、並びに、妊娠後期における食事及びサプリメントのビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、亜鉛、及び、妊娠後期における母親の喫煙を「a」について調整した。妊娠初期と妊娠後期の組合せモデルを、上に挙げたすべての潜在的な交絡因子について調整した。
b食事及びサプリメント葉酸塩は、連続変数と同じモデルに含まれていた。
c妊娠初期及び後期における食事及びサプリメント葉酸塩の摂取は、連続変数と同じモデルに含まれていた。
妊娠後期の補給葉酸は、3.5歳における喘息と持続性喘息のリスクの増加とともに関連しており(表3)、これは、モデルへの妊娠初期葉酸塩及び葉酸の添加を含む、潜在的な交絡因子の調整に左右されなかった。この関連性は多少減じられ、5.5歳では統計的に有意ではなかった。妊娠前又は妊娠後期に摂取される葉酸サプリメントは、いずれの年齢においても喘息と関連していなかった。
食事葉酸塩は、妊娠のいずれの段階においても、一方の年齢集団で喘息と関連していなかった。食事葉酸塩と葉酸摂取の和がモデルに含まれていた場合、結果は、葉酸サプリメント単独と同様であった(表3)。これは、全一日摂取量(妊娠初期において84%、妊娠後期において63%)に対する高い葉酸の補給による可能性がある。
解析を個別のカテゴリのアトピー性喘息及び非アトピー性喘息によって反復させた場合(データは示さない。)、それぞれの影響の大きさは、喘息全体でみられたもの(表3)に類似していた。しかしながら、妊娠後期における母体葉酸と、3.5歳におけるアトピー性喘息との関連性は、有意ではなかった(妊娠後期補給可能性の比率、1.26;95%CI:0.99、1.61)。
結果として、3.5歳における喘息によって、1つの有意な相互作用のみがあった。妊娠初期における食事葉酸塩の100 μg増加ごとに、母親が喘息であった場合、3.5歳の子どもの喘息の相対危険度が43%減少した(RRinteraction=0.57;P=0.04)。5.5歳の小児喘息においては、有意な相互作用がみられた。妊娠初期における食事葉酸塩の100 μg単位の増加ごとに、母親が妊娠初期に喫煙していた場合、5.5歳の子どもの喘息の相対危険度が77%増加した(RRinteraction=1.77;P=0.01)。妊娠後期における葉酸の1,000 μg増加ごとに、母親に先に子どもがいた場合、5.5歳の子どもの喘息の相対危険度が2倍を超えた(RRinteraction=2.20;P=0.03)。妊娠後期における葉酸の1,000 μg増加ごとに、母親が喘息であった場合、5.5歳の子どもの喘息の相対危険度が37%減少した(RRinteraction=0.63;P=0.03)。
3.5歳の解析を、小さな5.5歳サンプルサイズ(n=423)を用いて反復させた。影響の大きさはわずかに減じられ、信頼区間は広くなった。未調整モデルにおける妊娠後期の葉酸の係数が有意性を喪失した以外は、結果の有意性の変化はなかった。
考察
筆者らは、これが、葉酸の消費、具体的には、妊娠後期における補給葉酸塩の増加が、内科医によって診断される3.5歳の子どもの喘息、(3.5歳及び5.5歳における)持続性の喘息、並びに5.5歳における可能性のある喘息のリスクを有意に増加させることを実証する、ヒトによる初めて公表された研究であると考えている。
この観察された影響は、潜在的な交絡因子(妊娠初期摂取を含む。)の調整後に持続し、全一日摂取量に対する食事葉酸塩のわずかな寄与により、葉酸塩と葉酸の摂取の組合せについて考慮すると、類似していた。本研究では、ヒトにおけるアレルギー性喘息の罹患率増加が部分的に、メチル供与体による周産期食事補給の増加に関連し得ると結論付けた、Hollingsworthら(5)によって示唆されている臨床評価について、考察する。
幼児のコホートにおける喘息及び葉酸についての唯一のヒトによる先の研究は、18か月における喘鳴リスクのわずかな増加が、妊娠初期(12週未満)で開始する母体の葉酸補給と関連することを見出した。12週後に中止せず、妊娠全体にわたって葉酸塩を補給した女性を含む場合、全体的な影響はより少なかった。筆者らは、リスクの増加が、妊娠初期におけるサプリメント使用と関連していないことを見出した。これには、多くの潜在的な理由があるが、Håbergらの研究は、その短いフォローアップ時間(18か月)に限定され、このため、筆者らは、重複するが、潜在的に異なる現象横断研究を考察している可能性がある。喘息は、潜在的に異なる病因を有する多くの異なる表現型として示される。
初期の喘息及び喘鳴(2年未満)は、一時的であることが多く、後に、幼年期において治まる。2年を超えて持続する喘息は、肺機能の最も大きな損失を生じ、このため、公衆衛生において重要性が高い。Håbergらによる研究の更なる限界は、妊娠後期の影響を検出するのに十分感度が高くないと考えられる、葉酸補給の比較的単純な手段(ある/ない、投与なし)の使用である。
本研究でみられた葉酸補給の影響のタイミングは、関与する生物経路に対する洞察力を提供し得る。妊娠第一期後の影響についての筆者らの観察は、胎児免疫系の発達、並びに免疫グロブリンE(IgE)及び胎児IgE受容体活性に対する胎児の暴露が生じる期間と一致する。IgEは、Th2サイトカインによって刺激される。妊娠初期における羊水中には検出可能なレベルのIgEが存在するが、IgEの濃度は、妊娠第二期における母体IgE濃度と有意に相関して、妊娠中に増加し、16~20週において胎児のIgE受容体活性の劇的な上昇が伴う。
これは、喘息のリスクを増加させないように試みつつ、補給葉酸の神経保護効果を最適化するように投与が操作されてもよい、潜在的に重要なウィンドウがあるという予測を生じる。母体の葉酸一日摂取量は、主に、妊娠後期(総合ビタミン剤を一般に摂取する場合)と比較して、妊娠初期に、母親が独立型葉酸サプリメントを摂取する高い傾向により、妊娠後期と比較して妊娠初期において大幅に高かった。これは、喘息評価における暴露の重要なタイミングの影響と一致している。筆者らは、モデルに含まれる葉酸、他のビタミン及び無機質間の相関性を見出さなかったが、妊娠後期においてみられた関連性が、消費された総合ビタミン剤の別の成分によるものである可能性を排除することはできない。
筆者らは、サプリメント(合成)の形態で摂取される場合に葉酸の影響を見出したが、食事から摂取される場合にはその影響を見出さなかった。このことに対する妥当な説明は、葉酸塩形態間のバイオアベイラビリティーの相違であり、食品中のポリグルタメート形態は、サプリメント中のモノグルタメート形態よりも低いバイオアベイラビリティーである。さらに、推奨補給レベル(400 μg)では、合成葉酸類似体全体は、吸収時に生物活性メチル-H4葉酸塩に変換される。この用量を超えると、合成ポリグルタメートが、血液中に未修飾形態で発生する(13)。推奨レベルを超える葉酸の摂取によって、特に食品栄養強化が存在する国で、胎児及び母体の循環において未代謝葉酸が度重なり発生する可能性がある(14)。この未修飾葉酸塩類似体の影響は不明である。
しかしながら、これは、遺伝子発現調節のためにメチル供与体として作用する過剰な葉酸塩が存在することを示すと考えられる。
本研究の強みは、その正確な予測暴露測定及びそのタイミングであり、母親を、オーストラリアにおける食品の自発的な葉酸強化の導入に先立って採用した。本研究は、喘息に対する妊娠後期用葉酸サプリメントの影響が、リスクのわずかでかつ統計的に有意でない増加と関連していることを見出した場合、元のサンプルの76%が5.5歳の評価において完全な情報を提供したという制限がある。しかしながら、3.5歳の解析が、小さな5.5歳サンプルにおいてのみ利用可能なデータに制限される場合、筆者らは、影響の大きさの同様の減衰及び信頼区間の広がりを観察した。
したがって、筆者らが観察した影響は、慎重な評価であり得る。5.5歳において、葉酸、母親の喫煙、経産回数、母親の喘息状況及び小児喘息間の有意な相互作用が観察されたが、3.5歳では母親の喘息状況しか観察されなかった理由は不明である。5.5歳において郵送調査によって測定された喘息の評価が、構造化インタビューによって測定される場合ほど信頼できなかった可能性がある。
しかしながら、喘息のリスクに対する出生前暴露と出生後長期暴露の両方の重要性を示すことも考えられる。筆者らは、現在の子ども用サプリメント利用に関する情報を収集しなかった。12か月よりも下の子どもがサプリメントを必要とすることを大多数の親(76.4%)が信じないことを、このサンプルの範囲内の先の研究が見出しているので、第1世代の子どもが高いレベルのサプリメントを消費した可能性はなく、オーストラリア統計局のデータは、低い割合のオーストラリア人子どもが、2006年にサプリメントを消費したことを示す(2~3歳の子どもの9.6%、及び4~8歳の子どもの9.8%)。
研究インタビュー時の時間制約により、国際小児喘息・アレルギー(ISAAC)(International Asthma and Allergy in Childhood)研究に推奨されている、喘息症状の発生及びタイミングに関する一連の質問(17)を母親にすることは実現できなかった。本研究では、喘息を、他の調査研究及び国民健康調査で得られたアプローチに類似する、内科医による診断についての母親の報告によって判断した。喘息及びその重症度の客観的測定は、今後の研究の重要事項である。サンプルに対する筆者らの罹患率評価は、同様の期間(0~4歳、12.3%の少年、10.1%の少女)で試みられたオーストラリア国民健康調査で報告されているものに類似している。
筆者らは、アトピーに関する知見の解釈において注意を促しているが、これは、5.5歳では評価されず、客観的測定(例えば、皮膚プリックテスト又は血液検査)ではなく、アレルギーの指標を用いて、3.5歳において測定したということである。他の喘息表現型(例えば、初期及び後期発症喘鳴)を調査することが有利であったであろうが、これは、本研究の対象外であった。
妊娠中の葉酸塩のタイミング及び供給源に関する筆者らの知見は、妊娠中の最適な葉酸塩摂取に関する推奨に重要な意味を有する。世界の現行の推奨では、神経管欠損予防のために、妊娠前及び妊娠第一期に、約400 μgの葉酸の一日摂取が唱えられている。本研究における母親のほぼ半分(48.5%)は、妊娠前用サプリメントを摂取し、56%は、妊娠初期において、その必要な400 μg/日を満たしていた。
本研究の食事及びサプリメント摂取は、他のコーカサス人妊娠集団でみられた摂取(20-22)と広範囲で同等であった。予測されるように、本研究での食事摂取は、食品栄養強化が存在する国における出産年齢の女性で報告されている食事摂取よりも少ないと考えられる。
筆者らの知見は、妊娠前及び妊娠初期における現行の推奨と一致している。しかしながら、本知見は、潜在的な出生後呼吸器系の有害作用を最小化しつつ、葉酸の神経保護効果を最大限にするように、現行の補給戦略を考慮する必要を強調する。筆者らは、妊娠後期における葉酸補給に対するいかなる特定の推奨がなされ得る前に、本知見を再現する更なる研究の必要性を認識している。
要約すると、オーストラリア人家族の予測コホートにおいて、妊娠後期の高用量の葉酸補給が、3.5歳の子どもの喘息のリスク、並びに3.5歳及び5.5歳の持続性喘息のリスクを有意に増加させることを示した。本知見は、喘息のリスクの伝達についての理解において重要な意味を有し、幼年期の呼吸器系の健康に有害な、胎児の免疫表現型変化における妊娠中の葉酸塩によって低下したメチル化の可能な役割を裏付ける。
本知見は、喘息のリスクを増加させないように試みつつ、葉酸補給の神経保護効果を最適化するようにサプリメント投与が操作されてもよい、潜在的に重要な臨界期があるという予測を高める。また、本知見は、国際的に示されている喘息罹患率の上昇を説明するのに試験可能な理論も提供する。筆者らは、特定の根本的原因の経路を特定するのを支援する先の分子研究の拡大を求める。このような更なる研究は、妊娠後期における葉酸摂取の制限が、喘息の予防、そして、子どもの呼吸器系の健康に対して有益な効果を及ぼすか否かを判断するのに重要である。
翻訳まとめ
いかがでしたでしょうか?翻訳するのに難しい単語、データもありましたが、論文には、妊娠中の葉酸補給が、3歳~5歳の幼児の喘息に関わりがあるのではないか?という報告があり、研究機関が研究をすすめ、報告をしたものです。
まだ一部の研究機関の報告なので、の結果が確実なものとはいえない、という別の研究者もいることもあり、日本だけでなく、世界各国でも、国からの指示は、葉酸サプリは、1日400μg(マイクログラム)を守るということだけです。ただ、この研究結果が食事性葉酸は全く問題ないという数値がでていることから、サプリメントも、食品から抽出したモノグルタミン酸の葉酸サプリを選ぶようにしましょう。
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