妊活時に葉酸とマカに期待できる作用
妊活時に葉酸やマカの主な働きは、赤ちゃんの成長や造血作用、男性なら性欲の増強などが期待できると言われています。
葉酸は造血ビタミン
葉酸は水溶性ビタミンB群の一つです。たんぱく質や細胞を作り出すための細胞分裂、DNAの合成には欠かせません。また「造血ビタミン」という別名を持ち、血液の生成や貧血予防に効果があることが確認されています。
女性においては葉酸の摂取状況やその量が妊娠初期における胎児の臓器形成に影響を与えることが知られています。もちろん葉酸は女性だけでなく、男性にも欠かせないビタミンです。男性の葉酸摂取量が精子の染色体異常に関係することが報告されています(※1)。詳しい葉酸の働きや世代ごとに必要な葉酸量については、『丸ごと教える!葉酸の驚くべき効果と効能のすべて』をご覧ください。
マカは特に男性に効果が期待できる
マカは南米ペルーにあるアンデス山脈で栽培されている「かぶのような形」をした植物です。炭水化物やタンパク質をはじめ、体内で作れない必須アミノ酸など多数の栄養素が含まれています。そのため、一度に多くの栄養素が取れるサプリメントとして人気があります。
マカの摂取は特に男性に対して効果があるといわれています。マカを摂取した成人男性に対する研究から性欲増強(※2)をはじめ、精液量や一回の射精における精子量の増加(※3)の確認が報告されているからです。女性に対してもマカを摂取することによって、皮膚保護効果(※4)や更年期障害の予防効果(※5)が期待されます。動物実験の段階ですが、女性ホルモンのバランスを整える可能性も確認されています(※6)。
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葉酸やマカを摂取してほしい女性・男性とは?
葉酸は生活に欠かせない栄養素のため、女性・男性問わず摂取が必要です。妊活時においては、精子が染色体異常を起こす可能性を下げるためや胎児の先天性異常障害を防ぐためにも、早い段階から夫婦で一緒に摂取した方がいいでしょう。精子の染色体異常は、初期流産やダウン症発症の原因にもなります。
2008年にアメリカのカリフォルニア大学のバークレー校で発表された男性における葉酸の摂取と精子の成長に関する研究では、葉酸摂取量が多い男性の方が、葉酸の摂取が少ない男性に比べて精子異常が起こる確率が20~30%ほど減少していたという報告があります(※1)。
マカは性欲低下が目立っている男性、一度の性交時における射精量や精子量が少ないとされている男性には特に必要となってきます。スタミナ不足を補う働きも確認されているため、性交時に体力不足を感じる男性はもちろん、日常生活で体力低下を感じる女性にもおすすめです。女性ホルモンのバランスを整える働きとしても効果が期待できます。また多数の栄養素が含まれているため、食生活のバランスに不安を抱える人にも取り入れてほしいです。
妊娠が上手くいかない理由は決して女性だけに原因があるわけではありません。男性も自分自身の体をしっかりと作っていくことが、健康な赤ちゃんが誕生するためには大切です。
できれば妊活時には葉酸とマカの両方を摂取しましょう!
ここで気になるのが「妊活時には「葉酸」と「マカ」の両方を摂取した方が良いのか?」ということではないでしょうか。
結論からいうと葉酸とマカを一緒に摂取しても問題はないので、可能であれば妊活中は両方摂取していくのが望ましいでしょう。精子の成長にも関わってきますので、夫婦で摂取していくのが理想的です。
葉酸の摂取量は、平成27年国民健康・栄養調査によると18歳以上の男女の大部分が1日に摂取してほしい推奨量240μg以上を食事から確保できていることがわかります。しかし15~29歳までの女性の平均摂取量は、234μgでした(※7)。残念ながら妊活時の葉酸摂取量にやや足りていません。
この世代の女性だけでなく、葉酸が含まれている食べ物が摂取できていないと感じる人は、男女問わずこの機会に食生活を見直してみてはいかがでしょうか。さらに女性の場合には、サプリメントから400μgの葉酸を摂取することが推奨されています(※8)。
一方マカは、葉酸と異なり1日の推奨量等は特に規定されていません。それはマカという栄養素があるわけでなく、たんぱく質や炭水化物、鉄、亜鉛、必須アミノ酸などの多数の栄養素を含む自然食品だからです。
参考までの情報として、厚生労働省が運営している「健康食品」の素材情報データベースには成人男性において1日3g(=3,000mg)までの量であれば12週間安全に摂取することが確認できたという報告がされています(※9)。男性は1日の摂取量の参考にしてください。残念ながら女性に対する摂取量の報告は確認できませんでした。
マカはペルーから海外に持ち出す際には生の状態で持ち出せないため、日本国内に輸入されるマカは加工品の状態で届きます。そのためマカを摂取したい場合には、ほとんどがサプリメントや粉末といった状態で摂取することになります。サプリメントによって摂取できるマカの量が異なるため、各サプリメントを確認してください。
葉酸やマカをサプリメントで摂取する上での注意点
ここでは葉酸やマカといったサプリメントを摂取する上で気をつけてほしいことや意識してほしいことを3点紹介します。
マカの品質やサプリメントの製造過程に注目!
マカがどのような環境で栽培されて、加工されているのかといった品質に関する確認が必要です。マカは標高4,000m以上のアンデス山脈で栽培されており、良質なマカほどより高い場所で栽培されているといわれています。そのため、購入しようとしているマカはどこで栽培されたのかが大変重要となってきます。製品ラベルを見ても分かりにくい場合には販売サイト等で確認をしたほうがよいでしょう。
また国内で販売されているサプリメントの中には農林水産省が「農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないで、自然界の力で生産された食品」と認定した場合、有機JASマークを付与しています(※10)。こうした国のお墨付きも品質を確認する指標として大切です。
葉酸の耐用上限量を超えないようにしよう!
葉酸をサプリメントから摂取していく場合には、日本人の食事摂取基準(2015年版)に記載されている1日の耐用上限量を超えないように気をつけましょう。
これはサプリメントや強化食品から摂取できるもプテロイルモノグルタミンサン型の葉酸を1日に摂取しても問題がないとされる最大量を表しています。18~29歳、70歳以上の男女では耐用上限量が900μg、それ以外の成人男女においては耐用上限量が1,000μgです(※8)。
他の栄養素を過剰摂取しないよう気をつけよう!
葉酸とマカを摂取していくためには、複数のサプリメントを併用する人が大半だと思います。その際に気をつけてほしいのが、複数のサプリメントの併用によって、特定の栄養素が過剰摂取とならないように気をつけてほしいということです。
葉酸とマカのサプリメントにはそれ以外の栄養素が含まれていることがあります。過剰摂取にならないためにも、日頃摂取しているサプリメントには「他にはどのような栄養素が含まれているのか?」とこの機会に知っておくといいでしょう。
妊娠中のマカの服用は控えましょう!
タンパク質や脂肪酸、必須アミノ酸など多数の栄養素を含む自然食品のマカですが、人によっては妊娠中の摂取でホルモンバランスが乱れやすくなることがあります。
「健康食品」の素材情報データベースによると、妊婦・授乳婦に対するマカ摂取の安全性については次のように記載されています。“通常食事に含まれる量の摂取ではおそらく安全である。通常の食事以上の量での安全性は十分な情報がないため、摂取は避ける”(※10)。
マカは輸入規制の関係で生の状態で販売されることはまずありません。そのため、日本国内では日常的に食事にマカが並ぶということはほとんど考えられないのです。「通常の食事以上の量の摂取」というのは、加工品である粉末状のマカやサプリメントであると推測できます。ですが残念ながら女性において「どれだけの量のマカを摂取しても大丈夫であるか?」という研究報告は確認できていません。
こうした報告もあることから、妊娠が確認された場合には、一旦マカの摂取をお休みしたほうがよいでしょう。つわり等によって食事が満足にとれない場合に、体の栄養バランスを補う目的でマカの摂取をおこないたい場合には、必ずかかりつけの産婦人科医や薬剤師に一度相談してから摂取を再開するようにしてください。
まとめ
ここでは妊活時に葉酸とマカを夫婦で摂取する大切さ、摂取するメリットについて紹介しました。葉酸もマカも体にとって大切な栄養素を含みます。特にマカは私たちが食事から補えない栄養素も豊富に含む健康食品です。その一方で、世間で期待されている効果については科学的に解明されていない部分も多く存在します。
妊活時に「体によいから!」という理由だけで飲み始めるのではなく、医師や薬剤師を巻き込みながら「どのようにして葉酸とマカのサプリメントを摂取すると、より効果的なのか?」を夫婦で考えていくことが、妊娠に向けた体づくりにも、夫婦の健康を向上させるためにも大切ではないでしょうか。 |
- 引用文献
- ※1.Health Day Low Folate Levels May Harm Sperm
https://consumer.healthday.com/disabilities-information-11/misc-birth-defect-news-63/low-folate-levels-may-harm-sperm-613697.html - ※2.Gonzales GF ets. Andrologia. 2002 Dec;34(6):367-72. Effect of Lepidium meyenii (MACA) on sexual desire and its absent relationship with serum testosterone levels in adult healthy men.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12472620 - ※3. Gonzales GF ets. Asian J Androl. 2001 Dec;3(4):301-3. Lepidium meyenii (Maca) improved semen parameters in adult men.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11753476 - ※4.Gonzales-Castañeda C ets.Photodermatol Photoimmunol Photomed.
2008 Feb;24(1):24-31. Hypocotyls of Lepidium meyenii (maca), a plant of the Peruvian highlands, prevent ultraviolet A-, B-, and C-induced skin damage in rats.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18201354 - ※5. Brooks NA ets. Menopause. 2008 Nov-Dec;15(6):1157-62.
Beneficial effects of Lepidium meyenii (Maca) on psychological symptoms and measures of sexual dysfunction in postmenopausal women are not related to estrogen or androgen content.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18784609 - ※6. J Ethnopharmacol. 2014 Feb 3;151(2):897-902. Lepidium meyenii (Maca) enhances the serum levels of luteinising hormone in female rats.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24333960 - ※7.平成27年度食品栄養P.38−P.39表11・表12栄養素等摂取量
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou.pdf - ※8.日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要P.25
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf - ※9. 国立健康・栄養研究所「健康食品」の素材データベース マカ 安全性 危険情報 一般
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail60.html - ※10.農林水産省 有機食品の検査承認制度
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html
- 参考文献
- メディックメディア病気がみえるvol.10産科
- 自由国民社 小浦ゆきえ著 男と女の子宝サプリ
- 厚生労働省神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に関わる適切な情報提供の推進について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3a3-03c.pdf
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