妊娠高血圧症候群とは
妊娠高血圧症候群は、高血圧に伴う、むくみ・頭痛・めまい・胃痛・吐き気等がおきます。
妊娠20週~分娩後12週の間に、『高血圧(最高血圧:140mmHg以上/最低血圧:90mmHg以上)』か、『高血圧及び高血圧が原因の尿タンパク(1日の量:30mg/dl以上)』がある場合に、妊娠高血圧症候群と定義されます。
妊婦さんの10人に一人の割合で妊娠高血圧症候群と診断されるので、妊娠中の殆どの方に症状が起きるといっても過言ではありません。
妊娠高血圧症候群が『重症化』した場合、血が止まりにくいヘルプ症候群、全身にけいれんが起きるしかん発作、子宮内の胎児ごと胎盤が剥がれる常位胎盤早期剥離が起き、最悪の場合は母子ともに死亡に至るケースもあります。
母体だけではなく胎児にも悪影響は及び、聴覚障害や視力障害などの恐れもある低出生体重児、胎児が子宮の中で亡くなる子宮内胎児死亡などもあります。
このように妊娠高血圧症候群が原因で、母子共に健康状態が危うくなることもあります。
妊娠高血圧症候群の原因と発症しやすい時期
妊娠高血圧症候群の原因はハッキリとしていませんが、『遺伝により、胎児に栄養や酸素を与える胎盤の血管に異常が起きて高血圧に繋がる』という有力な説は存在します。
『日本妊娠高血圧学会』が発表しており、内容は、妊娠初期に胎盤の血管が作られる過程で欠陥(遺伝が原因)がおきて、胎児に栄養や酸素がおくられにくくなります。結果、胎児の発育が滞ると同時に、母体から胎児に無理に栄養や酸素がおくられ、母体の血流に負担がかかり妊娠高血圧症候群になるというものです。
このように今のところ、胎児の発育のために栄養や酸素を運ぶ血液が無理やり流されて高血圧に繋がることが原因となります。
発症時期に関してはハッキリとしていて、『妊娠5ヶ月~妊娠10ヶ月』に症状が出やすいです。
妊娠高血圧症候群になりやすい妊婦さんの特徴
妊娠高血圧症候群の原因がない場合も、『高齢出産』や『肥満』など二次的な原因により、妊娠高血圧症候群が起きることもあります。
当てはまる数が多いほど『高血圧』により、むくみや頭痛などの症状を招きやすいです。
~注意!妊娠高血圧症候群になりやすい妊婦さんの特徴一覧~
高齢出産
身体の機能低下が起きやすい35歳以上の高齢出産で、発症しやすいというデータがあります。
はじめての妊娠
妊娠経験がある方よりも、はじめて出産を経験する初産婦さんの方が発症しやすいというデータもあります。
血のつながりがある方が妊娠中の高血圧を経験している場合は、より発症しやすいです。
妊娠高血圧症候群にかかったことがある
過去の妊娠で症状が出た方は、繰り返す可能性が高いです。
肥満
妊娠していない通常時のBMI値が25以上で体重が55kg以上と肥満体型の場合、心臓圧迫から血圧を上昇させやすく、発症リスクが高まります。
BMIの計算式は、体重(kg)÷<身長(m)×身長(m)>になります。
高血圧
妊娠していない通常時または妊娠初期の血圧が、最高血圧で130~139mmHg、最低血圧で80~89mmHgの場合は発症率が上がります。
ストレスが多く仕事も忙しい
ストレスや疲労を感じやすいと、血圧のコントロールも行う自律神経のバランスが崩れて、妊娠高血圧症候群を招きやすいです。
多胎妊娠
双子や三つ子など多胎妊娠は、栄養や酸素を送り出す心臓に負担がかかる為、血圧も上昇しやすく、発症にも繋がりやすいです。
妊娠高血圧症候群の予防と対策
症状に大小はあるものの妊娠高血圧症候群は、ほとんどの妊婦さんが経験します。
完全に症状を無くすことは難しいですが、食事や睡眠など『食生活』と『生活習慣』に注意すれば、症状を軽くすることは可能です。
妊娠高血圧症候群の症状を放っておくと、産後何年か経過して、糖尿病やメタボなどの生活習慣病にかかりやすくなることもある為、予防や対策を怠らないようにしましょう。
【妊娠高血圧症候群の予防・対策になる食生活】
胎児の成長の為にも、炭水化物・タンパク質・ビタミンやミネラルと『栄養のバランス』を取りながらも、『低カロリー』を心がけて体重増加を防ぐことも大切です。
また、『1日10g以下』と塩分控えめにすることも重要です。塩分過多は、塩分を薄めようと血中の水分が多くなり、心臓の負担による『血圧上昇』で妊娠高血圧症候群を招きやすいです。
塩や醤油など調味料の他に、塩分を多く含む食べ物もあり、パンやチーズやドレッシングなどがあげられます。
食事の栄養バランスやカロリーに関して、自分で行うことが難しい場合は、医師に指導してもらうと良いでしょう。
【妊娠高血圧症候群の予防・対策になる生活習慣】
妊娠中は『安静』にすることが一番大切です。仕事や遊びなど動き回ったりすると、からだが疲れやすく、心身の機能を支える自律神経の乱れで、血圧の調節も上手くいかなくなります。
少し疲れたと感じたら、横になって『睡眠』をとることもお勧めです。疲れが回復します。
『ストレスを溜めない』ことも同じくらい大切になり、ストレスも自律神経のバランスを乱して高血圧を招きます。
からだに負担をかけない範囲で、妊娠中でもできるマタニティヨガや散歩などでストレス発散を心がけましょう。
妊娠高血圧症候群と葉酸の関係性
現在では、『葉酸の血流改善による血圧降下』が、妊娠高血圧症候群の『治療』や『予防・対策』に役立つのではないかと研究者や専門家などが指摘しています。
実際に、東京大学大学院医学系研究科や名古屋市立大大学院などで『葉酸の妊娠高血圧症候群に対する研究』が行われており、徐々に葉酸の有効性が明らかとされています。
このことから妊娠中は葉酸も含め、バランスの良い食事や生活習慣に気を付ければ、妊娠高血圧症候群のリスクを限りなく減らすことが可能となるでしょう。
まとめ
以上が、妊娠5ヶ月から妊娠10ヶ月に起きやすい妊娠高血圧症候群についてでした。
簡単に振り返りますが、妊娠高血圧症候群とは『高血圧』による症状で、むくみや頭痛などに悩まされます。
本当に多くの妊婦さんがかかり、『高齢出産』や『肥満』などによって発症リスクが高まります。
症状が重症化した場合、母子共に危険な状態になることもあり、『死亡』する可能性もゼロではありません。
その為、重症化する前に、きちんと『食生活』や『生活習慣』に気をつけて予防・対策を行っていくことが大切です。現在では、『葉酸』の有効性が注目されている為、葉酸を含むブロッコリーや納豆などの食材やサプリの活用もしていくと良いでしょう。
最後に、妊娠高血圧症候群は症状が分かりにくいこともあり、気付いたときには重症化しているケースもあるので、何か気になる症状があれば、妊婦健診を待たずに速やかに受診してください。
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