流産とは
流産とは22週未満で妊娠が中断されてしまうことを指します。22週から37週未満までの妊娠の中断を早産と呼び、37週以降から42週の間の出産は正期産と呼びます。
流産は22週未満というスパンの中でもさらに早期流産と後期流産に分けられます。早期流産は5週目以降、12週目未満、後期流産は12週目以降、22週未満に発生する妊娠の中断のことです。流産のほとんどは早期流産として現れます。
また 後期流産以降の死児の出産を死産と呼びます。
流産は決して稀なものではありません。統計では15%前後の割合で流産が発生すると言われています。また加齢とともに流産する確率は上がっていき、40歳を超えると25%前後の割合で流産が発生すると言われています。
流産の種類別の症状と主な原因
稽留流産(けいりゅうりゅうざん) | 稽留流産は胎児が子宮内で死亡し、そのまま留まっている状態です。母体にはほとんど自覚症状がありませんが、性器から少量の出血が現れることもあります。そのままだと妊娠の継続が不可能なため、子宮内容除去術という子宮の内部を取る手術を行います。また自然に胎児が子宮内からでるのを待つ待機療法をすることもあります。 |
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進行流産 | 流産が進行している状態です。大量の性器からの出血と下腹部痛が見られます。この状態では胎児の心拍動が確認できないため、妊娠の継続は不可能です。そのため子宮内容除去術を行う必要があります。 |
完全流産 |
完全流産は流産により胎児とその付属物がすべて子宮内から除去された状態です。完全流産する前までは下腹部痛や性器からの出血が現れますが、完全流産することでそのような症状も消えます。また経過観察で対処することが多く子宮の状態がもとに戻り、再び妊娠が可能になります。 |
不完全流産 |
不完全流産は流産により胎児やその付属物の一部が子宮内に留まってしまう状態を指します。下腹部痛や性器からの出血が続き、このままでは妊娠の継続が不可能なため子宮内容除去術を行う必要があります。 |
習慣流産 |
習慣流産は流産を連続で3回以上、繰り返す状態のことを指します。1回だけの流産は珍しいことではなく、2回の流産も100人いれば数人程度の頻度で発生します。しかし3回を超える流産をする場合は母体になんらかの原因がある場合があります。流産が習慣化してしまう現認は様々ですが、粘膜下筋腫、子宮奇形などの子宮異常や膠原病、抗リン脂質抗体症候群などが習慣流産の要因となります。 |
この中で最も多いのは不完全流産です。
また厳密には流産ではありませんが「切迫流産」という状態もあります。
切迫流産 |
ほかの流産が妊娠の継続が困難なのに対して、切迫流産は妊娠の継続が可能な場合もある状態です。流産が発生する危険がある状態ですが、胎児の心拍動を確認できます。妊娠初期に切迫流産が生じてしまうと有効な治療法はありませんが、16週目以降ならば子宮収縮抑制薬での治療が可能となる場合があります。 |
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流産の原因の多くは染色体異常であると考えられています。先に述べたように流産は15%の割合で起こります。そのため、ある程度は自然なものであり予防は難しいと言われています。
流産の際に重要になるのは子宮の機能を残して次の妊娠を行えるようにすることです。
また明確な原因とは言えませんがカフェインやアルコール、喫煙、肥満は流産のリスク因子になると考えられています。
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流産のリスク低減と葉酸の関係
妊娠の極初期には葉酸が非常に重要な栄養素になります。
葉酸は胎児が脳や、せき髄のもとになる神経管と呼ばれる器官を発育させるために重要になります。妊娠の初期に葉酸の摂取量が不足してしまうと「神経管閉鎖障害」が胎児に発生してしまう可能性が高まります。
神経管の頭となるもののほうに葉酸不足により障害が起きると「無脳症」、神経管の脊髄になるもののほうに障害が起きると「二分脊椎症」となってしまいます。
無脳症が発症するとその名の通り、脳が形成されなくなり流産・死産の可能性が非常に高くなります。
二分脊椎症になると生命の維持自体には大きな影響を及ぼすことは少ないですが、生まれてからの様々な神経障害が現れます。
葉酸が流産のリスクを低減させるという情報もありますが、正確には「葉酸を十分に摂取することにより神経管閉鎖障害を予防し、流産・死産をリスクを減らす」ということになります。また葉酸は妊娠の初期以外にも胎児が十分に細胞分裂するために必要になるため、葉酸不足が続くと胎児に悪影響が出ることも考えられます。葉酸に限らず必須栄養素はきちんと推奨摂取量を摂るようにしましょう。
流産のリスク低減のために妊婦さんが気を付けること
流産のリスクを低減させるためには妊婦さんが以下のことに気を付けましょう。
妊娠の計画段階から葉酸サプリを摂取する
葉酸は妊娠の初期に最も重要度が高まります。胎児の神経管閉鎖障害を予防するためには妊娠の計画段階からの摂取が重要になります。厚生労働省では妊娠を計画していたり、妊娠の可能性があったりする場合に葉酸を成人女性の推奨摂取量に加えて400μg摂取することを勧めています。
20代や30代女性の1日の葉酸の推奨摂取量は240μgであるため、640μgほどの摂取が推奨されていることになります。ただしこの際に注意しなければいけないことが+400μgの追加摂取分は「プテロイルモノグルタミン酸」として摂取することです。プテロイルモノグルタミン酸は自然の食品に含まれているのではなく、サプリメントや葉酸強化食品に含まれている葉酸です。妊娠初期の神経管閉鎖症候群を予防して流産リスクを低下させるためには葉酸サプリメントの使用が効果的でしょう。
喫煙、アルコール、カフェインは避ける
喫煙、アルコール、カフェインともに胎児の流産のリスク因子になると考えられています。そのため妊娠を計画している段階からなるべく避けるようにしましょう。喫煙、アルコール、カフェインともに流産だけではなく胎児の奇形のリスクも増やしてしまいます。その意味でも避けるべきでしょう。また受動喫煙も胎児に悪影響を与える可能性があるため、食事をする際などは完全禁煙の飲食店を選ぶようにしましょう。
肥満を解消する
肥満は流産の可能性を高めると考えられています。
特にBMI指数が30を超えてしまうと、30未満の人に比べ流産のリスクが有意に高くなると言われています。適正体重を保つことは健康管理にも効果的なためぜひ、肥満を解消してから妊娠をして妊娠中も太り過ぎないようにしましょう。
なおBMI指数とは人間の身長に対する体重の指数です。BMI指数=体重Kg÷(身長mの2乗)で求めることができます。適正な体重はBMI指数が22のときと考えられているため、(mの2乗)×22で適正体重を求めることができます。身長155cmの女性ならば1.55×1.55×22=52.90kgが適正体重となります。
まとめ
葉酸は胎児の先天性疾患である「神経管閉鎖障害」を予防する働きがあります。神経管閉鎖障害は無脳症を引き起こす可能性があり流産や死産の可能性を高めてしまいます。
胎児が葉酸を最も必要にする時期は妊娠初期であるため、妊娠を計画する段階から葉酸のサプリメントを摂取するようにしましょう。また流産リスクを低下させるためには喫煙、アルコール、カフェインの摂取も控え、なるべく体重も適正に保つようにすることも大切です。 |
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