葉酸の主な効果(働き)
葉酸とは、ビタミンB群の一種で、ほうれん草の葉から発見されたことにより葉酸と名付けられました。
この名前の由来から、葉物の野菜にのみ含まれていると思われがちですが、レバーなど動物性の食品にも多く含まれています。
葉酸は私達の体にとって大切な栄養素で、特に細胞分裂やDNAの合成などに必要とされています。
また、ビタミン6やビタミン12と共に動脈硬化を起こす原因でもあるホモシステインを減らしたり、ビタミンB12と共に赤血球を作っています。(1)
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男女成人における葉酸の摂取基準量
葉酸の1日の推奨量は成人男女は240μgとされております。
妊娠期は、葉酸を補給することで、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを7割~8割程度、低減できるということから、成人の摂取量である240μに+200μgで440μg(400μg~440μg)、授乳期はこれに+100μgで340μg必要とされています。(2)
※2000年より、妊娠していなくても妊娠を計画している女性に対して400μg以上の葉酸の摂取を推奨しています。これは神経管閉鎖障害という先天性疾患の発症リスクを減らすためであるといわれています。(3)
【男女別の1日あたりの葉酸の摂取量の基準値】
男性 | 女性 | 妊婦 | 授乳婦 |
---|---|---|---|
240μg | 240μg | 480μg | 340μg |
妊婦さんは葉酸を摂取するように言われたのはなぜ?
『2000年』に厚生労働省は、妊婦さんへ葉酸を摂取するよう勧告しました。それから2年して、『母子手帳nの「娠中と産後の食事の欄』にも葉酸の摂取についてが記載されました。()
最近になって葉酸の摂取がすすめられた一番の理由は、『胎児の神経管閉鎖障害(障害児や死産)のリスク低減』になる為です。
『1991年』にアメリカで行われた、妊婦さんを対象とした実験の中で、妊娠中に『400μg』の葉酸を摂取すると、神経管閉鎖障害の発症率が『7割』も減るという結果が出ています。同様の実験でも、『妊娠中の葉酸の必要性』が明らかとされています。(5)
この結果を受けて、日本の神経管閉鎖障害が『増加傾向』という点や食生活の多様化から『葉酸不足』になる点も懸念して、厚生労働省は妊婦さんに葉酸の摂取をすすめ始めました。それから間もなくして、母子手帳の記載もはじまっています。
葉酸は食べ物から摂取しにくいのが欠点
葉酸を含む食品は多くありますが、熱や水に弱く、料理する段階で葉酸は破壊されてしまう点、また、吸収率が悪く摂取しにくいということが一番の欠点です。
食品を食べた量に対して、50%程度しか吸収されません。(6)
その為、特に不足してはいけない妊娠時の場合、400μg摂取するためにほうれん草を200g食べると、計算上では420μg摂取できますが、葉酸の吸収率を考えると、210μg×50%=105μgとなるので、単純に4倍量(約ほうれん草4束)を食べないと、きちんと体の中に吸収されないことになります。
葉酸を多く含む代表的な食品名(100g当たりの葉酸量)
- レバー類100μg
- えだまめ260μg
- ほうれん草210μg
- よもぎ190μg
- 納豆120μg
葉酸を多く含む食べ物は『葉酸が多い食べ物・食品一覧【妊娠中のNG食品ガイド付き】』を参考にしてください。
その為、葉酸が大切な妊娠前や妊娠時には、食事に加えて、葉酸サプリを飲むことが、推奨されています。
葉酸不足・葉酸欠乏症の症状
葉酸が不足した症状として口内炎や食欲不振、下痢などの症状が現れる傾向があります。
そのような症状が続く場合は、葉酸が不足状態にある可能性がありますので、普段より葉酸を多く含む食品を意識して摂取するか、葉酸サプリや栄養補助食品からの摂取をおすすめいたします。
葉酸が不足した状態が続くと、動脈硬化や、悪性貧血の引き起こす葉酸欠乏症を発症するリスクが高くなってしまいます。(7)
葉酸欠乏症になるとホモシステインが血中に蓄積されやすく、動脈硬化の危険性が増加すると言われています。
ほかにも造血が追い付かなくなるため巨赤芽球性貧血(悪性貧血)や、神経障害などがおこりやすくなるだけでなく、特に妊娠中は、胎児が神経管閉鎖障害を負うリスクが高まります。
そうならないためにも日頃から、葉酸をうまく補給することがとても大切です。
葉酸の主な働き
葉酸は身体の細胞分裂にも関係している大切な働きをしていることから、美容や健康に大切な栄養成分のひとつです。
葉酸は、健康から美容までさまざまな場所で役立っていることから、妊娠中以外でも健康や美容の為に、1日に必要な摂取量を意識した食生活を送ることが大切です。
妊活・妊娠期間別の葉酸の働きと期待できる効果
妊活中や妊娠中の方が摂るべき葉酸の1日の摂取量は次の通りです。
妊活中 | 妊娠発覚~3カ月まで | 妊娠4カ月~出産 | 産後 |
---|---|---|---|
440μg (推奨量240+付加量400) |
440μg (推奨量240+付加量400) |
480μg (推奨量240+付加量240) |
340μg (推奨量240+付加量100) |
特に妊活中から妊娠4ヶ月まで意識して摂取することで、赤ちゃんのダウン症や神経管閉鎖障害など先天性の障害のリスクを軽減させることができると言われてます。
その他にも、葉酸を摂取することにより、着床がうまくいき、流産の確立を減らすことができるという研究データもあり、妊娠中のつわりを軽くする働きもあるということが言われております。
妊娠中以外にも、産後の母乳の出やつまり、抜け毛などの対策にも効果が期待できると言われています。
● ダウン症と葉酸の関係
ダウン症とは染色体(DNA)の異常によって起こるといわれています。
葉酸はDNA合成に深く関わっています。葉酸が不足するとDNAの異常が起きやすくなります。
北海道大学大学院医学研究科の発表によると葉酸を十分に摂取しているとダウン症のリスクが軽減される可能性があるということ発表されています。(9)
● 着床と葉酸の関係
着床の健康には葉酸もふくめビタミン全般が大切といわれています。(8)
葉酸も着床機能のサポートに大切な栄養成分となりますが、食事からの栄養を基本として足りない分をサプリメントで補うなどのケアをおこなうようにしましょう。
● 神経管閉鎖障害と葉酸の関係
神経管閉鎖障害とは胎児の先天異常の一種です。
遺伝でない場合は葉酸を十分に摂取することにより発症リスクが軽減されるといわれています。神経管閉鎖障害になると神経組織に異常をきたし、多動症(ADHD)や下肢の運動障害・膀胱機能障害につながるリスクが高くなる可能性があるだけでなく、脳がうまく作られず無脳症となるケースもあります。
産後・授乳中の葉酸の働きと効果
● 葉酸と母乳の関係
0歳~5歳までの乳児の1日あたりの葉酸摂取の目安量は50㎍といわれております。母乳の葉酸濃度を維持するためにも、授乳中の葉酸の摂取は必要の可能性があるとされています。(10)
● 葉酸の産後の回復の働き
産後はそれまで増えていた血液量が一気に減ってしまうため体内の血液が不足した状態になります。そのせいでなかなか妊娠前のように元気に動けないなんてことも。また、子育てへの不安などにより精神的に不安定になっている場合もよくあります。
葉酸は、足りない血液を作り、体力を回復させる作用があるだけでなく、自律神経を整える働きもあることから、産後の回復や、不安感を軽減することが期待できます。
葉酸の美容や健康面で期待できる効果
葉酸は、美肌やダイエットなどにも大切な働きをしており、アンチエイジングなどの美容の為にも欠かせない成分です。
女性の美容に対する葉酸の働きを下記よりまとめましたので参考にして頂けたらと思います。
● 肌荒れ・美肌と葉酸の働き
葉酸の働きの一つ、たんぱく質の合成が肌荒れ・美肌に関わっています。たんぱく質を合成することにより、肌が生まれ変わり、肌荒れが治り、美肌へ近づくだけでなく、髪の毛のツヤやハリも期待できます。
● 生理不順に対する葉酸の効果
現代の女性の悩みでもある生理不順。ビタミン不足により女性ホルモンの分泌が低下したことや血液が不足したことが原因の一つであるといわれています。葉酸を摂取することにより血液を十分に作ることができ、生理不順も改善や対策も期待できます。
● ダイエットに対する葉酸の効果
葉酸は血液を作る作用があることから、血流量がUPすることにより、冷えが改善され、体温が上がります。体温が上がると基礎代謝があがり、痩せやすい体になります。
葉酸の上手な摂取方法
最初に説明した通り葉酸は水や熱に弱く、さらに食材からの摂取だと吸収率が非常に悪い栄養素です。
葉酸を摂る目的で食事をする場合はなるべく火を通さない食べ方だと効率よく葉酸を摂取することができるでしょう。
しかしわざわざ料理をする時間がない方や、料理をしていても葉酸が足りない方は、サプリメントなどに頼るとよいでしょう。
葉酸を多く含んだ栄養補助食品や、吸収率のいいモノグルタミン酸型の葉酸を使用しているサプリメントから補給すると質の良い葉酸を手軽に摂取することができます。
サプリメントを利用する際に注意すべき点は上限量を超えないことです。上限量を超えるとじんましんや呼吸困難などの副作用が出ることがあります。
葉酸は適量を継続して摂取することにより効果が期待されるもので、サプリメントは規定の量を超えないように継続して摂取するようにしましょう。
葉酸の吸収を阻害する食品一覧
葉酸を阻害する『愛好品(お酒やたばこ)』や『食べ物』や『飲み物』もあり、葉酸を摂っても身にならず、『効果』も確かめにくくなります。
その為、愛好品をなるべく控えて、葉酸を阻害する食べ物や飲み物を摂取する際は『朝食』と『夕食』など時間をあけるようにしましょう。
~葉酸を阻害するものとその理由~
お酒
お酒に含まれる『アルコール』を分解する際に、葉酸が使われて、葉酸不足に陥ります。
たばこ
たばこを吸うと、細胞のダメージを再生しょうと、『血中の葉酸濃度』が下がり、葉酸不足に繋がります。
キャベツやインゲン豆など
葉酸と『相性の悪い』食べ物が存在していて、一緒に食べると『吸収』が妨げられます。
今のところ、キャベツ、インゲン豆、レンズ豆、オレンジがあげられます。
緑茶
緑茶に含まれる『タンニン』は、葉酸の『吸収』を妨げます。
他にも、紅茶、コーヒー、烏龍茶、ビール、ワインにもタンニンは含まれます。
まとめ
葉酸は妊活や妊娠時に特に必要とされる栄養素ですが、それ以外の健康や美容にとっても、重要な働きすることから、意識して摂取したい成分です。
毎日を美しく、快適に過ごすためにも、葉酸を多い食べ物や、葉酸サプリメントを活用して、元気でハツラツな毎日を送りましょう。
参考文献
(1)神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3a3-03c.pdf
(2)日本人の食事摂取基 2015年版(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
(3)神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1212/h1228-1_18.html
(4)母子健康手帳について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/0111/s1130-1.html
(5)Prevention of neural tube defects: results of the Medical Research Council Vitamin Study. MRC Vitamin Study Research Group.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1677062
(6)葉酸 - 「健康食品」の安全性・有効性情報
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail652.html
(7)葉酸欠乏が血管機能におよぼす影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kasei/57/0/57_0_59/_article/-char/ja/
(8)食べ物による着床機能の改善(小塙医院)
http://www.ivf-ibaraki.or.jp/20180217/2717.html
(9)葉酸摂取のすすめ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/6/2/6_2_53/_pdf
(10)産後1週目から8週目の母乳中葉酸濃度の経時的変化
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/67/1/67_27/_pdf/-char/en
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